320 MHzの帯域をまるごと見たい、そういう要望もままあります。
320 MHz BWを素直にUSRPで取ろうとすると、X410クラスが必要になり、それなりのお値段になります。
そんな中、rtl-sdr.comでこんな記事を見つけました。
「Wi-Fi 7ルーターを320 MspsのSDRにする」
https://www.rtl-sdr.com/turning-a-wi-fi-7-router-into-a-320-msps-sdr/
なんと、市販のWi-Fi 7ルーターを320 MspsのSDR受信機にしてしまったということです。

(2.4 GHz帯のWi-Fiが全部見えています)
一体何なのか?
使っているのは Gemtek W1700K というWi-Fi 7ルーターです。
W1700Kは、もともと米国のISP Quantum Fiberが2024年に家庭向けに配っていたWi-Fi 7のメッシュノードで、2025年にQuantum FiberがAT&Tに売却されたあと、中古品がそこそこの数ネットに出回るようになったようです。
このW1700Kが搭載しているMekiaTek MT7996のファームウェアをまるごと自作のものに置き換えて、Wi-Fiとしてではなく、生のIQデータを取り出すようにしています。
中身はこんな構成です。
| 部品 | 役割 |
|---|---|
| MediaTek MT7996 | Wi-Fi 7 無線チップ |
| MT7976 | 2.4 GHz RF |
| MT7977 ×2 | 5 GHz / 6 GHz RF |
| Airoha AN7581 | SoC(10GbE付き) |
MediaTek純正ファームの動作をトレースして、初期化やキャリブレーションをレジスタ単位で解読したそうです。
……これはなかなかの執念です(たぶんClaudeが頑張った)。
スペック
READMEから拾ったスペックをまとめるとこんな感じです。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| サンプルレート | 40 / 80 / 160 / 320 Msps |
| ビット幅 | 14 bit IQ(ホストには int16 で渡される) |
| 周波数範囲(例) | 2.081 ~ 2.748 GHz 4.647 ~ 7.509 GHz 4.707 ~ 7.576 GHz |
| チューニングステップ | 2.98 Hz(2.4 GHz)、11.9 ~ 14.3 Hz(5/6 GHz) |
| 再チューニング時間 | 約1 ms |
| アナログフィルタ | 20 ~ 320 MHz |
| ゲイン | AGC もしくは LNA/BB 手動 |
| ホスト接続 | 10GbE(MTU 9216) |
| 送信 | 不可(受信専用) |
取り出したIQデータはSoC上のDRAM(1 GiBのリングバッファ)にDMAされ、10GbE経由でホストPCにUDPで流れてきます。
ホスト側ではブラウザでスペクトラムとウォーターフォールが見られます。
320 Mspsが10GbEで転送できるのか?計算してみました。
14bit IQなのでギリギリ通るようです。
半分のスライスを28 bit(14 bit × 2)に詰めると平均30 bit/サンプル
320 Msps × 30 bit = 9.6 Gbps → ぎりぎり収まる
使用可能な周波数範囲は個体によって変わるようで、PLLがロックできる範囲ならWiFiのチャネル表に縛られず自由に設定できるそうです。
入手性
さて、肝心のW1700Kはどこで手に入るのか。
米国では中古が出回っているものの、rtl-sdr.comのコメント欄では「W1700Kは手に入りにくい」とも言われています。
日本ではどうかというと、Amazonに商品登録はあるものの在庫切れ。
探してみると、ヤフーフリマにOpenWrt書き換え済みのものが出品されていました。
OpenWrtで遊んでいる人が日本にもいるということですね。
格安に320 MHz BWをセンシングできる……はずですが、まずはルーターを手に入れるところが一番のハードルかもしれません。
まとめ
Wi-Fiチップが中でやっていることは、結局のところSDRと同じです。
RFでダウンコンバートして、ADCでサンプリングして、デジタルで処理する。
その途中のIQを取り出せれば、SDRになるわけです。
前回のESP32-SDRに続いて、身近な無線チップが次々とSDRになっていく流れは見ていて楽しいですね。
とはいえ、
- 任意の周波数を
- 送信も受信も
- 複数チャネルを位相同期して
- 長時間安定して
となると、やっぱりUSRPの出番です。
320 MHzクラスの広帯域収録や、GPSDOで周波数安定度を確保した収録再生をしたい方は、ドルフィンシステムのRF収録再生システムもぜひご検討ください。
RF収録再生システム
https://rfcapture.dolphinsystem.jp/
以上、ドルフィンシステム福島でした。

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