同じAD936x系USRPでもEVMは違うのか。この差は◯◯が原因か?――B200mini、B200、NI USRP-2901、E320でWi-Fi送信品質を比較

こんにちは。ドルフィンシステム福島です。

USRP B200シリーズ、NI USRP-2901、USRP E320はいずれもAnalog DevicesのAD936x系RFトランシーバを搭載しています。

同じIQデータを同じ設定で送信すれば、送信品質も似たようなものになるのでしょうか?

今回は4機種から同じWi-Fi IQデータを送信し、USRP X310で収録した信号のEVMを比較しました。

なお、これは校正された測定器による性能評価ではなく、手元の実機を使った簡易比較です。


比較したUSRP

機種 RFIC RFチャンネル 主な構成上の違い
USRP B200mini AD9364 1Tx / 1Rx 小型のUSBバスパワー機
NI USRP-2901 AD9361 2Tx / 2Rx Ettus B210と機能的に同等のNIモデル
USRP B200 AD9364 1Tx / 1Rx B200シリーズの標準サイズ基板(TCXO搭載)
USRP E320 AD9361 2Tx / 2Rx Zynq SoC、TX/RXフィルタバンクを搭載した組込み型USRP(OCXO搭載)

測定条件

項目 条件
送信信号 全機種で同じWi-Fi IQデータ
受信機 USRP X310
収録時間 1回1秒
測定回数 各機種3回
解析フレーム数 1回あたり約891フレーム
受信レベル IQ振幅がフルスケールの約0.3
解析アプリ NI RFmx WLANを使用したWi-Fiフレーム解析(ドルフィン製)

中心周波数、サンプルレート、帯域幅、X310側の設定は同一とし、受信レベルが近くなるように送信ゲインを調整しました。

送信ゲインの調整は、測定前に各USRPからスペアナに対してテスト信号を送信し、-55 dBm近辺になるように送信ゲインを調整しました。

各USRPの送信設定値

項目 USRP X310 + UBX USRP B200mini USRP B200 NI USRP-2901 USRP E320
中心周波数 2 GHz 2 GHz 2 GHz 2 GHz 2 GHz
IQ Rate 10 Msps 10 Msps 10 Msps 10 Msps 10 Msps
ゲイン 受信:10 dB 送信:50 dB 送信:50.6 dB 送信:49 dB 送信:51 dB
アンテナ 受信:RF0 - RX2 送信:RF0 - TX/RX 送信:RF0 - TX/RX 送信:RF0 - TX/RX 送信:RF0 - TX/RX
クロックソース GPSDO Internal gpsdo gpsdo gpsdo
GPSDO / 機器構成 搭載 非搭載 TCXO搭載 TCXO搭載 TCXO搭載
 

測定結果

機種 平均EVM EVM換算値 フレーム間標準偏差
B200mini -32.647 dB 約2.33% 1.477 dB
NI USRP-2901 -36.162 dB 約1.56% 0.529 dB
B200 -36.829 dB 約1.44% 0.562 dB
E320 -38.324 dB 約1.21% 0.613 dB

今回の条件では、次の順になりました。

E320 > B200 > NI USRP-2901 > B200mini

各機種とも3回の平均値はよく一致しており、測定間の最大差は0.080 dB以下でした。したがって、今回見られた機種間の差は、測定の偶然の変動よりも十分に大きいと考えられます。

結構差が開きました。E320はGPSDOのOCXOを搭載していて、B200はTCXOを搭載していますが、NI USRP-2901とB200miniは非搭載です。このあたりが原因でしょうか?

機種ごとの傾向

USRP B200mini

平均EVMは-32.647 dBで、4機種中最も悪い結果でした。B200との差は約4.18 dB、E320との差は約5.68 dBです。

フレーム間のばらつきも他機種より大きく、平均値だけでなく、フレームごとのEVMも広く分布していました。

USRP B200

平均EVMは-36.829 dBで、E320に次いで良好でした。

同じAD9364を搭載するB200miniより約4.18 dB良く、AD9361を搭載するNI USRP-2901よりも約0.67 dB良い結果でした。

NI USRP-2901

平均EVMは-36.162 dBでした。

平均値ではB200にわずかに及びませんでしたが、フレーム間標準偏差は4機種中最も小さく、安定した結果となりました。

USRP E320

平均EVMは-38.324 dBで、今回の比較では最も良好でした。

NI USRP-2901とは同じAD9361を搭載していますが、平均EVMには約2.16 dBの差がありました。

同じRFICでも結果は同じではない

同じRFICを搭載する機種同士でも、次の差がありました。

比較 平均EVMの差
B200とB200mini(AD9364) 約4.18 dB
E320とNI USRP-2901(AD9361) 約2.16 dB

一方、異なるRFICを搭載するB200とNI USRP-2901の差は約0.67 dBでした。

この結果から、送信EVMはAD9361かAD9364かというRFICの型番だけでは決まらないことが分かります。基板上のRF回路、電源、クロック、フィルタ、キャリブレーション、送信ゲインの動作点、個体差などを含めた送信機全体の性能として評価する必要があります。

注意点

今回の結果は、各機種の一般的な性能を保証するものではありません。

各機種1台のみの比較であり、機種差と個体差を分離できていません。また、1つの周波数、波形、送信レベルでの結果で、X310の受信系や解析処理の誤差も含まれます。

したがって、RFIC単体の比較ではなく、手元のUSRPをWi-Fi送信機として使用した場合の実用的な比較と考えてください。

まとめ

同じWi-Fi IQデータを送信して比較したところ、今回の条件ではE320が最も良く、B200miniが最も悪い結果となりました。

特に、同じAD9364を搭載するB200とB200miniで約4.18 dB、同じAD9361を搭載するE320とNI USRP-2901で約2.16 dBの差がありました。

送信EVMはRFICの型番だけで決まるのではなく、基板、電源、クロック、設定、個体状態を含めたUSRP全体の違いとして現れるようです。

今回の結果には、各機種の基準発振器の違いも影響している可能性があります。E320はOCXO、B200はTCXOを搭載しているのに対し、NI USRP-2901とB200miniはGPSDOを搭載していません。

実際に、今回の平均EVMはE320、B200、NI USRP-2901、B200miniの順となり、基準発振器の構成との相関があるようにも見えます。

ただし、今回の測定だけでは、基準発振器、RF回路、電源、フィルタ、キャリブレーション、個体差などの影響を切り分けることはできません。ある程度の参考になると思います。

以上、ドルフィンシステム福島でした。

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