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前回に引き続きNI Days 2018の技術セッションで講演した内容を、お送りします。
前回は「SDRのソフトウェア環境」についてご紹介しました。
今回は、"オープンなSDRの世界"についてお送りします。
SDRの歴史(再掲)
以前のメールニュースで、SDRの歴史についてご紹介しました。
今回ご紹介するのは、赤枠で囲っているコミュニティベースの「オープンなSDR」になります。
オープンなSDRのエコシステム
SDRの世界というのは「ソフトウェアで信号処理をする」という技術面だけではなく、下図にあるような様々な要素やいろいろな人たちが相互に活動して成り立っているエコシステム・生態系です。
ソフトウェア無線機を開発する人たち、ライブラリを整備する人たち、開発環境を作る人たち、その上でプロジェクトを進めていく人たちなどが重層的に活動しています。
まず一番下の「ソフトウェア無線機」のレイヤーを見てみます。
ソフトウェア無線機の開発企業は、ソフトウェア無線機とその制御ソフトを開発、販売しています。この開発企業に、部品を供給するチップベンダーもSDRをターゲットにして事業を展開しています。
ナショナルインスツルメンツは、このレイヤーで開発されたソフトウェア無線機を自らの製品ラインに加え、LabVIEWに対応させプラットフォーム化を推し進めています。
この開発企業は、SDRコミュニティの方たちと連携を取りながら、彼らの意見や動向を見ながら開発を進めています。
また逆にSDRコミュニティも開発企業の動向を見ながら、自発的にライブラリやGNU Radio等の開発環境の開発をして、ネット上で広く共有していく動きがあります。
SDRコミュニティは、"GNU Radio Conference(GRCON)"を開催し、ネット上だけでなくF2Fでも交流しているのも特徴です。
あと面白いのは、このLimeMicroというチップベンダーがLimeSDRというソフトウェア無線機を開発しているのですが、実はクラウドファンディングでお金を集めて開発・販売しています。
SDRというのはオープンソース文化、インターネットと親和性が高い世界です。
オープンなSDRの世界で重要なこと
「無線の世界において、
ハードウェアとソフトウェアが分離した」
今まで、無線機というものはハードウェアとその上で動作するソフトウェアが密接不可分のものでした。
無線機を開発する場合、ハードウェア開発能力を求められましたし、ソフトウェア実装能力も求められていました。
しかしSDRの世界が立ち上がったことで、無線通信のアルゴリズムに精通していればハードウェア開発が出来なくても、無線機を作り上げることが出来るようになったのです。
さらにオープン化していることで、ソフトウェア無線機は世界中で販売され誰でも購入することが出来ます。ということは、私が作ったアルゴリズムが世界中の誰でもダウンロードして動かすことが出来ます。
パソコンやスマートフォンの世界ではずいぶん前から当たり前の話ですが、ようやくオープン化の潮流が無線機の世界にやってきたのです。
SDR革命を例えると
SDR革命は、ガラケーとスマートフォンに例えると、良く分かるかもしれません。
ガラケーは開発した会社が電話機もソフトウェアも全部作り付けているので、ユーザは使うだけで自ら手出しのしようがありません(一部JAVAアプリはありますが)。
これに対してスマートフォンは電話とアプリが分離していて、自由にアプリケーションやサービスを展開することが出来ます。
全く違う世界というのはおわかりだと思います。これと同じ事が無線の世界で起きているのがSDRです。
まとめ
次回は、SDRを導入すると一体どう変わっていくのか?を複数回に分けて事例をご紹介します。
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