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SDRを導入したらどう変わるのか?~ドルフィンシステムの事例~

少し間が空いてしまいましたが、3回前に引き続きNI Days 2018の技術セッションで講演した内容を、お送りします。
前回は「オープンなSDRの世界を理解する」についてご紹介しました。

今回はSDRを導入すると、どのように変わるのか?
弊社ドルフィンシステムの事例を元に紹介します。

ソフトウェア無線機があったからコア業務に集中できた

以下は、ある無線システムを開発した際の作業種別ごとに作業時間を集計したグラフです。

左側がSDR導入前のグラフで、右がSDR開発時のグラフです。

従来型というのは、ある実験無線機を構築するための各要素(RFモジュール、AD/DAコンバータ、FPGAボード、CPUボード)を別々に購入し、くみ上げ、制御ソフト開発をし、FPGA上に信号処理を実装しました。

右側のSDR(PXI)は、ナショナルインスツルメンツのPXIモジュールを組み合わせて、こちらもFPGA上に信号処理を実装しました。

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従来型では、作業全体の42%がデバッグです。

別々のメーカの製品を利用するため、それぞれ「フィージビリティスタディ・動作検証作業」という泥臭い作業を行います。メーカごとに電気的仕様の差異、EMI/EMS(ノイズ)対策レベルの違い、デバイスドライバの善し悪しなど「仕様書に現れない振る舞いの違い」があり、調査には時間と根気が必要な作業です。

これらを合計すると作業全体の42%を費やす結果となってしまったのです。

しかしSDRの場合、ハードウェアそのものやPCとのインターフェイス部分は既に開発されたものがナショナルインスツルメンツから提供されているので、

この部分の開発時間やデバッグ時間が完全に無くなり、本来集中すべき信号処理開発に集中することが出来ました。


生産性の向上

信号処理開発でも大幅に生産性が向上しました。

"OFDM送信部を実装するための時間はどの程度かかるのか?"

これを比較するために、弊社のエンジニアが2種類の開発環境で実装時間を比較しました。

  • LabVIEW FPGAを使用して実装
  • VHDLのコーディング

その結果、VHDL(手入力)に比べ、LabVIEW FPGAは2.86倍高速に実装することが出来ました。

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ここでは信号処理ロジックだけを対象に比較しました。

ですが従来型のFPGA(VHDL)開発では、PCI Expressバスアクセス等インターフェース周りなどを作りこむ必要があるのですが、
既に実装されているLabVIEWでは実装自体が不要です。

またグラフィカルな開発環境であるLabVIEWは、FPGAから取得したデータの閲覧が簡単に実現できます。

LabVIEW以外では「取得したデータをCSV形式で出力してExcelでグラフで見る」などの三手間くらいかかりますが、
LabVIEWならFPGAから取得したデータパスをグラフに接続するだけで見える化完了です。

実装だけで無くトータルで考えるとさらに LabVIEW FPGA の開発効率はもっと高いでしょう。


実現したSDRならではの事

ドルフィンシステムが、
メールでフェージングシミュレータを納品した”

この言葉はSDRを象徴する色々な意味が込められています。

一つは、フェージングシミュレータという「測定器」がメールで納品できてしまったということ。

もう一つは、ソフトウェア開発会社のドルフィンシステムが測定器というハードウェア製品を開発し納品してしまったと言うことです。


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通常の測定器は、物理的な測定器のハードウェア部分とそれを制御するファームウェア部分が不可分の存在で、それぞれが別に販売・流通はしません。

ですがSDRの世界では、ソフトウェア無線機はソフトウェア無線機として流通していますので、
その上で動作するソフトウェア部分も別々に流通することが可能です。

これがSDRのパワーで、ドルフィンシステムは測定器のソフトウェア無線機上でフェージングシミュレータを実装することでソフトウェア無線機が測定器として成立し、その結果ソフトウェア開発会社がハードウェア製品を販売可能になったのです。

SDRのパワーを利用することで、業態を超える事が出来ました。これをパラダイムシフトと呼ばずしてなんと呼ぶのでしょうか。

また納品形態もSDRでは「ソフトウェア的」に変貌します。通常の測定器の納品手段は「輸送」です。それがSDRの世界に入ると「メール」や「ダウンロード」で納品できてしまいます。

無線機のハードウェア部分が「ソフトウェア無線機」という形で抽象化され、その結果としてソフトウェアが分離し別個に開発・流通できるようになりました。

PCの世界では20年以上前から、WindowsやPC/AT互換機という抽象化されたレイヤー上で実現していた形態ですが、ようやく無線の世界でもソフトウェア無線機やUSRP、UHDといったレイヤーが展開されることでハードウェアとソフトウェアが"Unbundle"された世界が実現され、そのパワーが発揮されつつあります。


まとめ

次回は、SDRを導入すると一体どう変わっていくのか?の実際の開発事例をご紹介します。

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