USRP B210でRF収録再生を使いこなすための基礎知識と注意点

こんにちは、ドルフィンシステム福島です。

前回は、USRP B210を使ったRF収録再生システムそのものをご紹介しました。

「届いたその日から使える――USRPの“めんどくささ”を全部解消したRF収録・再生システム」

続いて弊社の笹生が、実際にその環境を試したレポートを公開しています。

「届いてすぐ使えるって本当? USRPベースのRFキャプチャ/プレイバック環境を試してみました」

今回はその補足編です。USRP B210を使ってRF収録再生を行うときに、知っておくと後で効いてくるポイントをまとめます。

特に以下のような方には参考になるはずです。

  • B210とB200系のどちらを選ぶか迷っている
  • B210の2ch動作をMIMOや位相評価に使いたい
  • B2x0系の「便利な点」と「ハマりやすい点」を先回りして把握したい


B2x0系の種類と違い

USRP B2x0系には、実質的に次の2系統があります。

  1. 2chを搭載したUSRP B210
  2. 1chのB200系とB206mini

まず押さえておきたいのは、主な違いはサイズとチャネル数であり、RF性能の基本線は共通だという点です。

なお、B200mini系にはB200mini、B200mini-i、B205miniなど複数の型番がありましたが、今後はB206miniに統一される見込みです。搭載FPGAサイズに違いはありますが、FPGAを書き換える用途でなければ、通常のRF収録再生では大きな差はありません。


項目備考
対応周波数70 MHz - 6 GHz-
チャネル数2 Tx / 2 RxB210の場合
最大帯域幅48 MHz BWフィルタ帯域幅は56MHz BWだが、
サンプリングレートは61.44 MSps
なので最大帯域幅は約48MHz BW
接続USB 3.0-
RFICAD9361(B210)
AD9364(B200系)
-


ここで注意したいのが、B210を2ch同時に使うときの帯域幅です。B2x0系は最大48 MHz BWで収録再生できますが、B210で2ch同時収録または同時再生を行う場合、1チャネルあたりの使える帯域は半分になります。必要帯域が24 MHz BW以内なら、B210の2ch同時動作はかなり魅力的です。

機種同時使用チャネル数最大帯域幅
B200 / B206mini1ch使用48 MHz BW
B2101ch使用48 MHz BW
B2102ch使用24 MHz BW


B2x0系のメリット

弊社で出荷しているUSRPの中でも、B2x0系は特に人気があります。理由は単純で、取り回しの良さ、コストと性能のバランスが非常に良いからです。

主なメリットは以下の通りです。

  • USB接続なので、バスパワーで動作できる
  • 小型ながら最大約48MHz BWまでの収録再生に対応する
  • B206miniはカードサイズで、ノートPCまわりに組み込みやすい
  • AD93xx系RFICのおかげでDCオフセットがかなり抑制されている
  • B210は2チャネル間の位相が固定されている
  • B200 / B210はGPSDOを搭載できる

特に「小型」「USB接続」「そこそこ広い帯域」「2ch位相固定」という組み合わせは、現場ではかなり強いです。机上の評価でも、持ち出し用途でも、扱いやすさが効いてきます。

なお、GPSDOをOCXO運用する場合はACアダプター駆動が必要です。このあたりは、あとから配線で悩みやすいので先に意識しておくと楽です。

無信号状態のスペクトラム : 中心周波数 2GHz, 帯域幅 49.152MHz BW


B2x0系のチャネル間位相

USRP B2x0系やUSRP N310のRFドーターボードは、AD93xx系RFICを使っています。この構成には、他のUSRPとは少し違うクセがあります。

良い面から言うと、USRP B210は2ch送受信が可能で、しかも2つのチャネル間の位相が固定されています。これはMIMO、干渉計測、ビームフォーミング、偏波比較のような用途では大きな武器になります。低コストで位相整合の取れた2ch系を用意できるからです。

位相差については記事の後半で触れています。

一方で、この構成は万能ではありません。2つのチャネルを別々の周波数に設定することはできません。

つまり、B210を使って

  • 片方のアンテナで2 GHzを収録する
  • もう片方で2.5 GHzを収録する

といった使い方はできません。

逆に言えば、同一周波数での垂直偏波・水平偏波の比較や、同一信号の2ch同時計測には非常に向いています。

詳しくは、過去記事でも触れています。

USRP B2x0/E310/N310は2つのチャネルに別々の周波数を設定できないhttp://mikioblog.dolphinsystem.jp/2019/06/usrp-b2102.html


B2x0系のハマりどころ

B2x0系は扱いやすい反面、AD93xx系ならではの注意点もあります。導入前に知っておくと、かなり遠回りを減らせます。

例えば、以下のような点です。

USRP B2x0やE310/E320等AD93xxを使用しているSDRデバイスは高調波・低調波に注意

ちなみに弊社のRF収録再生システムでは問題ありませんが、Windows環境では高サンプルレート時にオーバーフローやアンダーフローが出やすかったり、LabVIEWではPLL Lockエラーなども発生する場合があります。

詳しい話は、以下の過去記事をご覧ください。

NI USRP-2900(Ettus B200)の動作は不安定
USRP B200でPLL Lock エラー


B210のチャネル間位相差を計測する(受信側)

実際に、B210のRF AとRF Bについて、受信時のチャネル間位相差がどの程度安定しているのかをドルフィンシステムで計測してみました。

今回の流れは次の通りです。

  1. 単一の信号ソースから疑似信号(Wi-Fi)を送信する
  2. その信号を分岐し、B210のRF AとRF Bへ入力する
  3. RF収録再生システムでRF AとRF Bを同時収録する
  4. 弊社笹生製の位相差計測プログラムで、2チャネル間の位相差を算出する
  5. 収録を繰り返し、さらにB210の電源再投入も挟みながら、位相差が固定されるかを確認する

要するに、「同じ信号を2本に分けて入れたとき、B210の2チャネルは毎回同じ位相差を示すのか」を見ています。

その結果が下図です。

6回収録を繰り返して各チャネルの位相差を計測したところ、おおむね-1度付近の位相差で安定しており、再収録や電源再投入後も大きく崩れないことが確認できました。




この結果から、B210は「2chを位相固定で観測したい」用途にかなり使いやすいことがわかります。もちろん絶対校正が不要になるわけではありませんが、少なくともチャネル間位相が毎回大きく動いて困る、というタイプのUSRPではありません。


まとめ

USRP B210は、USB接続で手軽に扱えるにもかかわらず、2ch同時動作と位相固定という強みを持った、かなり実用的な機種です。


一方で、

  • 2ch同時使用時は帯域が半分になる
  • 2チャネルで別周波数を使い分けることはできない
  • Windowsでは高レート運用に注意が必要

といったクセもあります。

このあたりを理解したうえで使うと、B210はMIMO評価、偏波比較、同時観測、ビームフォーミングなどで非常に頼れる1台になります。


ドルフィンシステムのRF収録再生システムは、デモ機も用意しておりますので事前の評価も可能です。

お気軽に以下のページからご連絡下さい。


https://rfcapture.dolphinsystem.jp/


以上、ドルフィンシステム福島でした。


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